原発事故処理に再エネ財源流用~政府提出のエネ特会改正案~
東京新聞のサイトからの引用↓
再生可能エネルギー普及の財源を東京電力福島第一原発の事故処理へ流用できるようにする「エネルギー対策特別会計(エネ特会)改正案」が三日、参院東日本大震災復興特別委員会で可決された。再生エネのための財源がいつ、どれだけ原発事故処理につぎこまれるかなど不透明な点が多いが、震災復興関連との「束ね法案」だったことで、エネ特会の議論は埋没した。 (石川智規)
◆参院委で可決
「復興庁をさらに十年間設置する意義は」「被災事業者の資金繰り支援は」。エネ特会改正案が審議された、衆参の復興特別委。復興庁の設置を十年延長する復興庁設置法改正案など計五本の法案で束ねられた結果、委員の質問は被災地の復興支援策に集中した。
エネ特会は本来、経済産業委員会で梶山弘志経産相が答弁すべきテーマだが、委員会室にその姿はない。立憲民主党の岡本あき子委員が衆院で「特別会計の目的に反するのでは」とただしたが、答弁に立った財務省の担当者は「制度の趣旨を損なうものではない」などと繰り返し、議論は深まらなかった。
三日の参院特別委では、共産党を除く賛成多数で可決。五日の参院本会議で成立する見通しだ。
経産省出身の元官僚は「検察庁法改正案とまったく同じやり方」と指摘。「誰も反対しない法案に難しい法案を束ねれば、質問が減って議論が薄まる。法案を通したい霞が関の定石だ」と批判する。
◆勘定間でやりとり
エネ特会は、財源と使い道ごとに「勘定」を分けている。「エネルギー需給勘定」は、石油会社などエネルギー事業者が負担する石油石炭税を財源に、再生エネや石油などの開発促進に使う。一方、「電源開発促進勘定」は、電気料金に上乗せされる電源開発促進税を財源に、原発政策に使われる。
政府の一般会計と切り離したエネ特会を、さらに別勘定で分けているのは、特定の財源を特定の目的に限って使うことを明確に示すためだ。
だがエネ特会改正案では、「原子力災害からの福島の復興に関する施策」について、勘定間のやりとりを可能にする。本来なら再生エネ普及に使われる資金が、原発の事故処理へと流用されることに道を開く。
◆説明乏しく
特別会計の趣旨を曲げてまで改正する背景には、福島原発の事故処理費用が今後もかさみ、将来的に資金が不足しかねない台所事情がある。
政府は「繰入金は後日、繰り戻す」(財務省)と説明する。だが国会審議では、どれだけの資金が繰り入れられ、いつ繰り戻すのかなど、貴重な財源の使い道を明確に示す場面はみられなかった。
青学大名誉教授の三木義一氏は「特会の意味が失われる大きな変更となるのに、議論が足りない。国民に広く周知させ、使途を細かくチェックする仕組みが必要だ」と指摘した。